TrueTypeとOpenType、どう選べばいい?
同じ名前の書体なのに、「TrueType」と「OpenType」の2種類のフォント製品が売られていることがあります。これはいったいなんでしょう?
どちらを選ぶのがいいのか、ケースに分けて説明します。
TrueTypeとOpenType、入れ物も中身も違う
TrueTypeとOpenTypeの違いを一言で言えば「形式の違い」です。
どちらもWindowsやMacの中でフォントとして機能する点では同じですが、TrueTypeのほうが歴史が長く、広く普及済みのフォント形式。一方、OpenTypeのほうはTrueTypeの弱点を大きくカバーした新たな形式で、高機能かつ余裕のあるフォント形式となっています。
Windows用にもMac用にも、それぞれのTrueType製品・OpenType製品というものが存在します。また、販売ラインナップはフォントメーカーによってまちまちです。
- 同じメーカーの同じ書体が、TrueTypeとOpenTypeの2製品で発売されている場合
- TrueTypeの販売を終了して、今ではOpenTypeしか販売していないという場合
- 最初からTrueTypeのみ (またはOpenTypeのみ) しか販売していない場合
- 安定性などの問題から、WindowsとMacとで、採用する形式を分けている場合
TrueType … 高度な機能は持たないが動作環境は豊富
TrueTypeは歴史が長く、20年以上前に登場した際には、「拡大縮小しても輪郭がガタガタしない」という、今では当たり前となった《スケーラブルなフォント》を実現したファイル形式として急速に普及しました。
すでに20年以上も使われていますので、対応している環境もたくさんあり、現時点ではOpenTypeよりも無難に使えるフォント形式といえます。
特にWindows用のアプリケーションでは、いまだにTrueTypeのみをサポートしているというものが残っています。たとえば、歴史の長いロングセラーの年賀状ソフトの多くや、お馴染みのMicrosoft WordやPowerPointの「ワードアート機能」部分はOpenTypeには対応していません。(2013年10月現在)
お使いのアプリケーションソフトがOpenTypeフォントに対応しているかどうか不安な場合は、まずはアプリケーションソフトのメーカーに確認を求めてください。その上で非対応ということが分かった場合は、TrueType製品を選ぶようにしましょう。
OpenType … ポテンシャルでは完全に優位
TrueTypeのもつ限界を緩和し、より高度な機能を持たせた新たなフォント規格がOpenTypeです。たいへんよく考えられた規格であり、WindowsとMacとの間で互換性を維持できるようになっている点も利用者にとって大きな変革です。
OpenType製品には、「収録文字数」「合字」「異体字の制御」「柔軟な文字詰め」など、OpenTypeならではの恩恵があり得ます。
ただし、このうち後の3つは一般的なホームユース・ビジネスユースのユーザーにとってはそれほど大きな意味はなく、また、使用するアプリケーションがそれに対応していなければその恩恵も受けられません。DTPなど専門的な目的でなければ、それほどは気にしなくてもよいでしょう。
その中にあって「収録文字数」は、一般の方に最も分かりやすい製品選びのポイントです。
モリサワ・
ヒラギノフォント・
モトヤ・
タイプバンク・
ダイナフォントといったブランドでは、より多くの文字 ── 例えばJIS第2水準を超える、使用頻度の低い漢字 ── を収録したフォントはOpenType製品としてのみ販売するようになっており、OpenType製品の分かりやすいメリットとなっています。
その一方、
ニィスフォント・
コーエーサインワークス・
欣喜堂では、収録文字数に関してOpenTypeとTrueTypeの間に違いがありません。このような製品の場合、どちらを選んでいいのかはちょっと微妙ですので、この後の説明を参考になさってください。
※ここで例を挙げた中には、すでにTrueTypeの販売を終了しているブランドもあります
結局どっちを選べばいい?
同じ書体でOpenTypeとTrueTypeの2種類の製品が出ていて、その収録文字数にも差がない (または自分にとってさほど意味がない) 場合、どうすればいいでしょう。
おおざっぱに言って、以下のようなかたは、TrueType製品を選ぶほうが安全です。
TrueTypeを買った方が無難なケース
条件 |
- Windowsユーザーで、かつ、フォントを買う目的が「年賀状・ワープロ・プレゼン資料」など、DTP以外のホームユース・ビジネスユースである
- Windows・Mac問わず、Illustrator 8以前・QuarkXPress 6以前など、古いDTPアプリケーションソフトを使う必要がある
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理由 |
- 上記の環境やアプリケーションソフト ── 特にロングセラーの年賀状ソフト ── には、OpenTypeに未対応なものがまだまだ多い
- ホームユース・ビジネスユースにおいて、OpenTypeの高機能をフルに活かす必要があまりない (フル対応したアプリケーションがない)
- Windows用のTrueTypeフォント (*.TTF) に関しては、今後発売されるアプリケーションソフトで使えなくなる可能性は低い (すぐ使えなくなる心配はない)
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一方、OS X (macOS) をお使いの方や、プロユース ── 特に「デザイン・出版・印刷」用途 ── では、すでにOpenTypeが主流と言って差し支えありません。
Windowsユーザーやホームユースがメインの方でも、使うソフトがOpenTypeに対応していることが分かっているのであれば、OpenTypeをおすすめします。
選べるならばOpenTypeがおすすめなケース
条件 |
- Mac (OS X以降) ユーザー全般 (Classicアプリケーションを使う場合を除く)
- Windows・Mac問わず、Illustrator CS以降・QuarkXPress 9以降など、最近のDTPアプリケーションソフトを使っている
- 利用したいアプリケーションソフトがOpenType対応であることが確認できている
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理由 |
- Mac (OS X以降) は最初からOpenTypeに対応しており、Mac OS 8/9時代のごく古いアプリケーションソフトを使うのでなければ問題なく使用できる
- Adobe製品など最新のDTP環境は軒並みOpenTypeに対応している
- 膨大な文字数、異体字制御、高度な文字詰めなど、OpenTypeの恩恵を活かせる
- WindowsとMac (OS X以降) との間でフォントの互換性を確保できる
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今後はどうなる? TrueTypeでも大丈夫?
OpenTypeの利点として挙げられる高度な文字詰め・異体字制御・莫大な収録文字数などは、主に出版物の本文として使われるような用途でメリットを発揮します。このため、ゴシック体・明朝体といった「本文系」のフォントを多く手がけるフォントメーカーは、積極的にOpenType製品の開発と移行を進めており、すでにTrueType製品・CID製品など古い形式の販売を終了したブランドも多くあります。
一方、ロゴやタイトルのように、印象的なワンポイントで使われることが多い書体の場合、前述のようなOpenTypeの利点にあまり大きな意味がありません。このため、例えば
デザイン書体や
デザイン系の毛筆書体に関しては、当面TrueType製品のみを販売していくブランドも残ると思われます。
出版に携わる方、論文や小説など本文系の文字組みをする方であれば積極的にOpenTypeの導入をお勧めしますが、そういったケースを除けば、TrueTypeだからといって極端に不利ということはないと言えます。
WindowsやmacOSといったOSそのものがTrueTypeフォントのサポートを突然中止するというのも考えにくいですので、「TrueTypeだから購入を躊躇する」といった過度の心配は無用でしょう。
2013.10.18 掲載、2016.11.24 更新